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誰が日本を先進国で最低の幸福度ランキングに導いたのか [政治および社会]

7月28日の投稿記事「当用漢字と中国簡体字の制定は文字に関する歴史で稀なできごと」は、次のような文章で終わっている。
    
<文字の簡略化が多大な恩恵をもたらすにも拘わらず、千年以上もそれが実現しなかったのはなぜであろうか。それはおそらく、「紙に記す形で受け継がれてきた文字を学び、それを使って文書を記してきた人たちは、文字とはそういうものだと思い定めており、簡略化することなど考えなかったのだろう。」と私は思う。その根底にあるのは、人間が有する保守性や固定概念に縛られる傾向かも知れない。「文字とはこういうものである」とする固定概念から解放されるには、前代未聞の苛烈な戦争体験、あるいは価値観の大転換を必要とした、ということであろうか。
    
既存の概念や事柄に縛られ、無条件にそれを受け入れている例は、文字にかぎらず多々あると思われる。政治についても同様な事例があると思われるので、タイトルを改めて後日に投稿したい。>
    
というわけで、きょうは選挙について書こう
と思う。
    
経済を最優先とする安倍政権はアベノミクスを標榜してきたが、企業は利益を貯め込むばかりで賃金はあがらず、格差問題はむしろ悪化している。国民が将来に不安を抱くゆえに消費は伸びず、日銀のデフレ脱却目標は達成されそうにない。先進国の中では国民の幸福度ランキングが最低であり(3月31日の記事「日本の幸福度ランキングをあげる政策」参照)、子どもの貧困率も先進国中では最悪に近いなど、この国の政治は理想から遠い所にあると思うが、そんな政治を糾明し、正そうとする国民が少ないのが現状である。
    
政治をまともなものとするには、「政治がまともでなければ政権を交代させる」必要がある。ところが、多くの国民が政治に不満を抱いておりながら、選挙に際しては驚くほどに棄権が多い。森友問題や加計学園問題などが重なり、安倍政権の支持率に翳りが見え始めたとはいえ、未だに最も支持率が高いのは自民党である。とはいえ、世論調査によれば、最も多いのは無党派層とのことである。
    
無党派層と呼ばれる有権者の中にも、政治に関心を持つ者と無関心な者がいると思われるが、いずれにしても無党派層は多数派であり、選挙の行方を左右する可能性がある。ある年の国政選挙に際し、森元首相が発言したことがある、「この選挙で無党派層には眠っていてほしい」と。首相を勤めるほどの政治家が、かくも驚くべき発言をしたのである。
    
私には選挙に関わる思い出がある。小学校の4年生か5年生の頃に国政選挙があったのだが、私は友人とともに畑道に立ち、家々に向かって叫んでいた「明日は参議院議員選挙だよー」と。叫んだ言葉を正確に覚えているわけではないが、小学生だった私たちがそんなことをしたのである。それはおそらく、学校で教師から話を聞かされたことで、選挙の重要性を深く心に刻み、村の人たちに伝えたかったからであろう。敗戦後間もない頃であったから、政治に対する国民の意識が極めて高かったに違いない。教師が小学生に選挙の重要性を説いたとしても、不思議ではないどころか、むしろ当然であったのだと思える。
    
いま調べてみたところ、その選挙は昭和22年4月に行われた第一回参議院議員選挙であり(私は小学校4年生)、投票率は61.1%だったとのこと。昭和25年の第2回参議院議員選挙の投票率は72.2%、昭和33年の衆議院議員選挙の投票率は77%であり、昭和時代を通じて70%前後で推移していたのだが、平成時代に入ると投票率は急激に低下し、現在に至っている。
    
昭和64年1月をもって昭和時代は幕を閉じたが、その頃はまだ、有権者の過半数が戦前に生まれている。平成時代になって棄権が増えた理由のひとつは、戦争を知らない世代が増えたことにあるのではなかろうか。政治が国民を犠牲にすることがありえることを、後期高齢者たちは身をもって識っているわけだが、戦前の日本を識らない若い世代には、政治に無関心な者が増えているのかも知れない。関心があるにしても、「選挙で誰に投票したところで、この国の政治が変わることはなく、自分たちの生活が改善される見込みもなさそうだ」との想いを抱いている可能性がある。人生のほとんどを自民党による政治下で過ごした戦後世代には、政治を見張ろうとの意識に乏しい者が多いような気がする。

    
中学校や高校で戦前の日本が犯した過ちをしっかり教え、国民が政治を見張ることの重要性を教えるならば、若い世代の政治意識が高まるであろうが、「この選挙で無党派層には眠っていてほしい」と思うような自民党の政治家たちは、「教育の場に政治に関わる事柄を持ち込むな」として、そのような動きを押さえ込むことだろう。
    
幸福度ランキングが先進国中の最低で、子供の貧困率も最悪レベルにある状況から抜け出すには、国民の多くが「政治とはこんなものだ」との思い込みを捨て、政治に関心を持ち、棄権することなく選挙に関わることである。画数の多い複雑な文字に苦労しておりながら、当用漢字の制定までに千年以上を要したわけだが、国民の多くが政治に関心を持ち、積極的に政治に関わろうとするなら、政治は良い方向に変わるはずである。
    
きょうのタイトルは「誰が日本を先進国で最低の幸福度ランキングに導いたのか」だが、日本をそのような状況に導いたのは国民ということになるだろう。政治家を選んだのは国民に他ならないのだから。
    
   

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