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岩国哲人さんのエッセイ「おばあさんの新聞」 [雑感]

4月20日の朝日新聞土曜版(be)に、絵本「おばあさんのしんぶん」の紹介記事が載っている。その記事は次のような文章で始まっている。    「おばあさんのしんぶん」(講談社 2015年)は、岩国哲人さんの体験をもとにした絵本です。70年以上前の出雲を舞台に、人と人がつながっている社会のあたたかさが描かれています。

 日本新聞協会主催になる「新聞配達に関するエッセイコンテスト」の最優秀作に岩国さんの「おばあさんの新聞」が選ばれたのは、2014年のことだという。そのエッセイをもとに書かれたのが絵本「おばあさんのしんぶん」である。エッセイの全文がすでに公表されているので、ここにそれを引用させていただく。

『おばあさんの新聞』  岩国哲人(78歳)

  一九四二年に父が亡くなり、大阪が大空襲を受けるという情報が飛び交う中で、母は私と妹を先に故郷の島根県出雲市の祖父母の元へ疎開させました。そのー年後、母と二歳の弟はなんとか無事でしたが、家は空襲で全焼しました。

  小学五年生の時から、朝は牛乳配達に加えて新聞配達もさせてもらいました。日本海の風が吹きつける海浜の村で、毎朝四十軒の家への配達はつらい仕事でしたが、戦争の後の日本では、みんながつらい思いをしました。

 学校が終われば母と畑仕事。そして私の家では新聞を購読する余裕などありませんでしたから、自分が朝配達した家へ行って、縁側でおじいさんが読み終わった新聞を読ませていただきました。おじいさんが亡くなっても、その家への配達は続き、おばあさんがいつも優しくお茶まで出して、「てっちゃん、べんきょうして、えらい子になれよ」と、まだ読んでいない新聞を私に読ませてくれました。

 そのおばあさんが、三年後に亡くなられ、中学三年の私も葬儀に伺いました。隣の席のおじさんが、「てつんど、おまえは知っとったか?おばあさんはお前が毎日来るのがうれしくて、読めないのに新聞をとっておられたんだよ」と。

 もうお礼を言うこともできないおばあさんの新聞・・・。涙が止まりませんでした。

 絵本「おばあさんのしんぶん」は、文・絵 松本春野  原作 岩国哲人 となっている。4月20日の朝日新聞土曜版の記事は、松本春野さんのインタビュー記事である。興味深く読んだけれども、物足りなく思えたところがあった。小学生時代の岩国さんが新聞を熱心に読んだことが、岩国さんの人生に大きな影響をもたらしたであろうことに触れていないことである。

本ブログで岩国さんについて書くのはこれが2度めである。岩国さんが逝去されて間もなく書いた「岩国哲人さんのこと(2023.10.30)」である。温厚で物静かだった(私から見て)岩国哲人さんのご冥福を祈ります。




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