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労働組合の活力と日本の活力 [政治および社会]

タイや香港の若者を主体とする反政府デモの写真が、日本で行われたかつてのデモを思い出させた。昭和35年の安保闘争やメーデーにおけるデモ、昭和43年から昭和44年にかけてなされた、多くの大学での学園紛争である。


昭和40年頃までは、メーデーのデモに参加する人も多かったし、春闘ではしばしばストライキが行われていた。その主体となっていたのは、労働組合の若い世代であった。


2018年4月14日に投稿した記事「組合活動とストライキの思い出・・・・・・労務担当者は言った『君は強者の側に立つべきだ』」に書いたように、私は労働組合の中央委員(職域ごとに1人の中央委員がいた)を務めたことがある。その一方で、幾人もいた同期の大卒社員たちは、いずれも組合活動には消極的で、むしろ冷淡ですらあった。将来の待遇に不利益だと考えていたのであろう。私が労働組合に関わったのは昭和40年頃だが、それ以降はストライキどころか、組合活動そのものが不活発になったように記憶している。


日本の高度経済成長期は昭和30年頃から昭和45年頃の期間とされている。経済が最も活気に満ちていたその頃は、労働運動が盛りあがってストライキなども行われていたことになる。毎年のように賃金が上昇していたということもあり、さらなる賃金の引き上げを期待する雰囲気が強く、社員たちも積極的に組合活動に参加したのだろう、と思われる。その結果として少しづつ生活にゆとりが生じ、それによって購買意欲も上昇し、さらなる経済活性化につながったのではなかろうか。(輸出による利益が経済発展に寄与したことは事実であるにしても。)


高度経済成長期が終わりを告げてからは、ストをしても無駄だとの思いが強まったのであろうか。経済成長にかげりが見られるようになると、賃上げよりも保身を重視するようになったのかもしれない。(保身を優先する生き方をする社員は、昭和40年頃にも少なくはなかったのだが。)



日本ではストライキが珍しくなったけれども、アメリカやヨーロッパでは今でもストライキが行われており、実質賃金は着実に上昇しているという。ストライキをしなくなった日本では、この数十年にわたって実質賃金が上がらないどころか、むしろ下がっている。日本を覆う閉塞感と長期低落感には、実質賃金が低下し続ける状況も関わっているのではなかろうか。経済成長が滞る中で社員たちの保身意識が高まり、組合活動への参加意欲を失わせ、労働組合の弱体化が実質賃金の低下を促進し、社会の閉塞感を助長した。それが今の日本の状況ではなかろうか。この国の働く者たちに対して、社畜なる言葉がかけられることがある。国をそんな状況にしたのは、まともな政治家を選んでこなかった国民というべきだろう。


アジア諸国に眼を向ければ、韓国や台湾さらに香港だけでなく、あの中国でもストライキが行われており、実質賃金は上昇している。国民の実質賃金が上昇し続けているためであろうか、それらの国はかつての日本のように経済が発展し続けている。日本では組合活動が低調になり、ストライキなどは過去のものになった。その結果として実質賃金の下落と経済の低迷をもたらしたのであれば、その責を負うべきは、経済界と結びついた政治を推し進めた自民党、そして、自民党を支持し続けた国民ではなかろうか。



自民党政権も賃金引き上げを主張するようになったが、日本の企業は配当を増やし、内部留保に努めるだけで、賃上げには消極的である。国民の実質賃金を上げ、国の活力を取り戻すには、財界と結びついている政府を頼るのではなく、国民の側が積極的に政治に関わり、賃金上昇を促す行動に出ることが望ましい、と私には思える。



この国にかつての活力を取り戻すうえで有効な手段のひとつは、労働組合が本来の姿を取り戻し、働く者を社畜の世界から引き出すことではなかろうか。政治をまともなものとするために、野党の成長を期待したいところだが、頼りない現状は残念なところである。そうであろうと、政権交代なくして現状の改革は望めない。国政選挙が行われるこの年が、明るい希望を抱かせる年となるよう願っている。




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