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嗅覚の喪失と復活 [身体と健康]

 30代で花粉症になり、発症してから10年あまりで匂いを感じなくなりました。鼻づまりゆえに致し方ないと思い、耳鼻科で治療を受けていながらも、匂いのことは医師に告げませんでした。
 あるとき、思い立って大学病院へ行き、匂いを感じなくなって久しいことを話すと、アリナミンテストなる検査を受けることになりました。アリナミンの静脈注射をして、ニンニクの匂いを知覚できるかどうかを調べるのですが、私にはまったく匂いが感じられませんでした。
 その結果、「あなたの嗅覚中枢は匂いを感じる能力を失っており、快復する可能性はまったくありません」と宣告されました。50歳になった頃のことです。匂いを感じないことにすっかり慣れていたとはいえ、そのような宣告には少なからぬショックを受けました。
 それから間もなくのことです。ある日、コーヒーを飲もうとしたところ、はっきりと懐かしい匂いを感じたのです。驚きと嬉しさのうちにコーヒーを味わったのですが、喜びも束の間、数時間後には匂いを感じなくなりました。
 私は大学病院を訪れ、匂いを感じたことを報告したのですが、担当医師は驚くどころか、私の言葉を聞き流すのみで、関心を示してはもらえませんでした。アリナミンテストを否定する事例があるわけがない、と思い込んでいたのでしょうか。
 年金生活に入って間もない頃、蓄膿症ということで、内視鏡を用いた手術を受けました。
 手術を終えて数ヶ月が経ったある日、コーヒーを飲もうとした私は、本当に久しぶりに、香しい匂いをかぎました。まだかすかではあったのですが、まぎれもないコーヒーの香りでした。
 それ以来、徐々に嗅覚は向上し、家族のうちでは最も鈍感ながら、匂いを感じるようになりました。そのことを大学病院に報告すべきかとも思いましたが、アリナミンテストを受けてから10年も経っていたので、私のような事例はすでによく知られているような気がして、どこにも報告しませんでした。
 このブログを書くに際して、久しぶりにアリナミンテストのことを思い出し、現在も実施されているのか知りたくなり、ネットで検索してみました。驚いたことに、アリナミンテストは今も行われており、「そのテストでにおいを感じることができなければ、嗅覚の快復は望めない」というのが定説とのこと。もしかすると、嗅覚を取り戻した私は、きわめてめずらしい例なのかも知れません。耳鼻科を訪ね、体験を話してみたくなりました。
 東京と名古屋で三つの耳鼻科医院に通いましたが、嗅覚について聞かれたことはありませんでした。匂いを感じないまま放置した場合、永久に嗅覚を失う危険性があるのであれば、そのことを教えてほしいものです。もしかすると、今では患者にきちんと伝えられているのかも知れませんが。


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