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リンカーンの出現が待たれる日本 [政治および社会]

現代社会での信じがたいことのひとつに、日本には奴隷制度があるということである。奴隷をつかっている企業は少なくないようだが、世間的に知られるようになるとブラック企業と呼ばれることになる。
もうひとつ、日本の恥となるような奴隷制度がある。日本の恥と呼ぶゆえんは、政府が主導している外国人研修制度がそれだからである。

法務、外務、厚生労働、経済産業、国土交通の五省共管によって設立された、公益財団法人国際研修協力機構(JITCO)なるものがある。
そのホームページには、その使命が次のように記されている。
  JITCOは、外国人技能実習制度・研修制度の適正かつ円滑な推進に寄与することを基本として、以下を使命としています。
1.技能実習生・研修生の受入れを行おうとする、あるいは、行っている民間団体・企業等や諸外国の送出し機関・派遣企業に対し、総合的な支援・援助や適正実施の助言・指導を行うこと
2.技能実習生・研修生の悩みや相談に応えるとともに、入管法令・労働法令等の法的権利の確保のため助言・援助を行うこと
1.制度本来の目的である技能実習・研修の成果が上がり、国際的な人材育成が図られるよう監理団体・実習実施機関、技能実習生・研修生、送出し機関等を支援すること(以下省略)

そのホームページには、外国人技能実習制度・研修制度の趣旨が次のように記されている。
   開発途上国等には、経済発展・産業振興の担い手となる人材の育成を行うために、先進国の進んだ技能・技術・知識(以下「技能等」という。)を修得させようとするニーズがあります。我が国では、このニーズに応えるため、諸外国の青壮年労働者を一定期間産業界に受け入れて、産業上の技能等を修得してもらう「外国人技能実習制度」という仕組みがあります。
 この制度は、技能実習生へ技能等の移転を図り、その国の経済発展を担う人材育成を目的としたもので、我が国の国際協力・国際貢献の重要な一翼を担っています。
「外国人技能実習制度」の利用によって、以下に役立ててもらうことにしています。 
(1) 技能実習生は、修得技能と帰国後の能力発揮により、自身の職業生活の向上や産業・企業の発展に貢献
(2) 技能実習生は、母国において、修得した能力やノウハウを発揮し、品質管理、労働慣行、コスト意識等、事業活動の改善や生産向上に貢献
(3) 我が国の実習実施機関等にとっては、外国企業との関係強化、経営の国際化、社内の活性化、生産に貢献

記されている趣旨は立派なものだが、その実態はどうであろうか。受け入れた実習生たちのほとんどは、建設業、織物業、農業などの現場において、極端な低賃金で働くことを余儀なくされている。奴隷のような待遇に耐えることができず、逃げ出す者もいるとのこと。
彼らは母国に帰っても活かすべき技能はなく、日本への不信と不満を募らせることになろう。こういうことでは、自民党政府は一部の業界のために、日本の将来に禍根を残している、と言えはしないだろうか。

企業や組織で働く日本人の多くは、精神的に組織に隷属しているのではないか。そのような精神風土の中から、ブラック企業が現れ、外国人技能実習制度に関わる問題が生じているのではないか。

私が小説「防風林の松」を書いたのはかなり以前のことだが、その中に次のような場面がある。主人公と友人が交わす会話である。

小説「防風林の松」から引用
「たしかに、いまの日本人の多くは奴隷みたいなもんだぞ。貴重な時間を犠牲にしてまで残業したり、働くこと自体が目的みたいな生き方をしたり……自分で自分を奴隷にしているようなものじゃないか。苦労しているわりには報われない社会だといっても、自分たちがそんな社会にしているんだよ。社会の仕組みに問題があれば、それを変えるために努力すべきだし、政治をもっと良くすることも必要だけど、そんな努力が日本では不足しているとおれは思うな」
「何のために働いているのか、おれたち自身がもっと考えるべきだな。まずは政治を良くしなくちゃならんけど、お前がいつか言ったように、政治のありようは、政治家よりもむしろ国民にかかっているんだ。政治に満足している者など、今の日本にはいくらもいないはずだけど、選挙では半分近くの者が棄権するんだから、日本という国はまったくおかしな国だと思うよ」(引用おわり)

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