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日本の核武装論者たち [政治および社会]

12月17日の記事「橋下徹の妄言・・・・・・平和の維持には核兵器が有用である?」の続きです。

 

毎年のように繰り返されるのは、国会議員にあるまじき言動である。問題となり、批判にさらされる言動をなすのは、圧倒的に保守系の国会議員である。12月13日のプレジデントオンラインに掲載された「ノーベル平和賞で平和は来ない」なる記事を読むと、橋下氏も疑問符のつく政治家だったといえそうである。


12月17日のブログで橋下氏に対する反論を書いたが、きょうは別の観点から橋下氏を批判することにする。


橋下徹は「もしも日本が核兵器を保有していたならば、アメリカは広島と長崎に原爆を落となかったであろう。そもそも太平洋戦争に至るまでアメリカがあれだけ強気になることはなく、開戦に至る前にどこかで譲歩し合って妥協が成立していたのではないか。このような僕(橋下徹)の考えは、力=核兵器の有効性を認めるものである。」と記している。


アメリカの強気な姿勢が日本を開戦に踏み切らせたのは事実だろうが(注1)、アメリカの強い態度には理由があったはずである(戦前のアメリカにも、トランプ大統領同様に、アメリカファースト的なところが多分にあったのだが)。盧溝橋事件を口実にして中国と戦端を開いた日本が、中国全土に軍を進めて数年が経ち、中国におけるアメリカやイギリスの権益に支障を来していた(注2)。それだけでなく、日本がドイツやイタリアと結んだ日独伊3国同盟に対して、アメリカは強い懸念を抱いていたところに、日本がフランス領インドシナへの進駐を強行したことで、日本に対して強硬な要求を突きつけるに至った。


橋本徹曰く「戦前の日本とアメリカがともに核兵器を所有していたなら、太平洋戦争に至るまでアメリカがあれだけ強気になることはなく、開戦に至る前にどこかで譲歩し合って妥協が成立していたのではないか」と。伝えられるように、ルーズベルト大統領が第二次大戦への参戦を望んでいたのであれば、そして、そのための口実を得るために日本との戦争を望んでいたのであれば、躊躇なくハル・ノート(注3)を突きつけてきたのではなかろうか。敗戦間近の日本に対して、広島だけにとどまらず、長崎にも原爆を落としたアメリカである。自国(財界というべきか)の利益のために、正義を振りかざしながら戦争を繰り返してきたアメリカである。たとえ核保有国同士であったとしても、ハル・ノートを持ち出したことだろう。軍人が政治を動かしていた戦前の日本は、強硬論を主張する軍人の意向によって政治が左右されていたわけだから、日本とアメリカがともに核兵器を持っていたならば(注4)、アメリカに対して原爆による先制攻撃をしかけたかもしれない。そんなことになっていたなら、日本は人口が大幅に減るほどの、壊滅的な惨状を呈する結果になったことだろう。


保守系の政治家の中には、耳を覆いたくなるような言辞を口にする者がいる。石原慎太郎や橋本徹のような核武装論者もいる。政治家にかぎらず、元学習院大学教授清水幾太郎のような学識者の中にも核武装論者はいる。政治家や学識者によるものだけに、その言葉が核武装を容認する者を生み出す懼れがある。著名人による核武装論を新聞などが糾弾しないのは、そのことがもたらす逆効果を懼れてのことかもしれないのだが、徹底的に論難してほしいと思う。12月13日のプレジデントオンラインに掲載された橋下徹による「ノーベル平和賞で平和は来ない」なる記事に対しても、それを非難する記事はまだ現れていないようである。


(注1)

12月17日の記事「橋下徹の妄言・・・・・・平和の維持には核兵器が有用である?」に記したように、戦前の日本においても、開戦の愚を指摘する日本人は少なからず存在していた。民主的な国であったなら、正論が声なき声に終わることなく、政治に反映されたのであろうが、戦前の日本には思想と言論の自由はなく、反政府的な言論は弾圧された。

 

(注2)

第二次世界大戦以前には、アジアのあちこちにヨーロッパの植民地があり、中国には多くの国(日本、イギリス、アメリカ、ドイツなど)がさまざまな形で権益を持っていた。


(注3)ハル・ノート
日米関係が悪化していた1941年、関係改善のための日米交渉が繰り返された。その最終段階に至った11月に、アメリカのハル国務長官から提示された文書が、戦後になってハル・ノートと呼ばれるようになった。当時の日本が受け入れることができない要求であり、日本を戦争に追いやる原因になった。


(注4)日本の原爆開発
戦前の日本は、理化学研究所の物理学者仁科芳雄が中心となり、原爆を開発すべく研究をおこなっていた。

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