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大統領をこきおろす映画を作れるアメリカという国 [政治および社会]

4月14日の朝日新聞文化・文芸面に面白い映画評が掲載されている。「愛国主義へ一撃 伝統のエンタメ」と題されたその評論は、「記者たち 衝撃と畏怖の真実 」と「バイス」という映画の評論である。


編集委員石飛徳樹氏によるその記事を、要点を抜粋して紹介させてもらうことにする。


 米国は、やる時はやる国である。いい意味でも悪い意味でも。そう思わせる米映画が相次いで公開された。ロブ・ライナー監督の「記者たち 衝撃と畏怖の真実」とアダム・マッケイ監督の「バイス」。2作品とも、2001年の同時多発テロの後、ジョージ・W・ブッシュ大統領がイラクとの戦争に突き進んでいった背景を描く。驚かされるのは、2本ともブッシュ政権を完膚無きまでにこき下ろしていることだ。
  「記者たち」は、イラク戦争反対を貫いた中堅新聞社ナイト・リッダーの記者たちが主人公だ。愛国的空気が支配する米国社会で不屈の闘いを続け、徐々に政府の嘘を暴いていく。ここでは、政権側が流したい情報をそのまま伝え、戦争賛成の世論形成に貢献した大手メディアも批判の対象となる。「大量破壊兵器」の存在を肯定したニューヨーク・タイムズ紙のジュディス・ミラー記者本人の近影が最後に映し出され、大恥をかかされる。
 「バイス」はそのものズバリ、ブッシュ政権を実際に動かしていたバイスプレジデント(副大統領)のディック・チェイニーの物語だ。・・・・・・・・こちらはブッシュ政権の要人を徹底的に虚仮にする。
 ・・・・・・・・これが米国映画の伝統の強みだ。映画というのは老幼男女や人種民族を超え、幅広い層の人々の感情を揺さぶることができる。一部の人間だけでは動かすことが出来ないのが民主主義国家だ。米映画の作り手はそこをよく心得ている。
 
記事は次の文章で終わっている。


 こういう健全な米映画を見ると、日本の現状を思わざるをえない。きちんと政府批判が出来ているエンターティンメント映画がどのくらいあるのだろう。


ブッシュの求めに協力した国は幾つもあった。イラク攻撃の口実だった大量破壊兵器の存在が嘘だとわかったとき、日本以外の国では、当時の政権を責める声がわき起こったのだが、この国では、小泉元首相を責める声はほとんど起こらなかった。


好ましからぬ法律を独善的に成立させ続け、アベノミクスの失敗を偽りのデータで隠し、あってはならない公文書改竄問題をないがしろにし、・・・・・・・・・・。このような安倍政権を批判し、揶揄する映画が作られるなら、「他の政権よりは良さそうだから支持する」ような国民はいなくなるだろうに。


ニューヨークタイムズはブッシュの戦争を支持したらしいが、ナイトリッダーは政権の嘘を果敢に暴いた。日本では政権に批判的な新聞は苦しい立場に置かれやすい。東京新聞の望月衣塑子記者は自民党から嫌われているようだが、その望月記者の著書を原案とした映画が作られ、参院選のある6月には、社会派フィクション『新聞記者』(藤井道人監督)が公開されるとのこと。楽しみである。





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