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特攻隊員穴沢利夫少尉の悲恋に想を得た小説 [小説]

2月20日の投稿記事「特攻隊員穴沢利夫少尉の笑顔」に関連する記事です。

「特攻隊員穴沢利夫少尉の笑顔」には詳しく書かなかったが、私が書いた小説「造花の香り」は、穴沢少尉とその婚約者に関わる悲劇(悲恋)から、反戦平和を主題とする悲恋物語の想を得たものである。戦時下の東京で学生生活を送る主人公が、婚約者と別れて海軍航空隊に入り、特攻隊員として戦死する物語である。
                                         
九州の出撃基地へ移動を命じられた良太は、婚約者に遺すべく用意していたノートに、次のような言葉を書く。私はその文章として、穴沢少尉と同様に、ひたすらに婚約者の幸せを願う言葉を記させた。そこに出ているパイナップルは、ふたりの間ではキスを意味しており、婚約者の家の書斎は彼らの語らいの場であった。

 

小説「造花の香り」より 

〈運命の糸に手繰られるまま浅井家に至り、爾来二年余にわたって厚情を受けたこと、深甚なる感謝あるのみ。故郷を遠く離れた東京の地で得た幸運をつくづく思う。

懐かしきかな書斎での思い出。千鶴と語りし言の葉の数々。千鶴と味わいしあのパイナップル。様々な佳きこと、様々な思い出、それらが千鶴と共にあることを嬉しく思う。千鶴と出会えたことこそ我が人生最大の喜びであった。

これまで千鶴の人生二十年、その中に喜の時を共有し得たことを俺は嬉しく思う。しかしながら千鶴の人生は長きに渉るもの。我等が共有した時間は僅かなものに過ぎない。

これから先の数十年、この国が変わって行く中で千鶴を様々な運命が待っているはず。新しき世の中で千鶴は新しき道を歩まねばならない。千鶴はいかなる道を歩むことであろうか。良太を伴ったままに新しき道を歩むことは困難であろう。千鶴は身軽にならなければならない。千鶴は身軽になって新しき道を歩まねばならない。千鶴よ幸せな人生を歩めよ。〉

                                                    

九州の鹿屋航空隊で待機している間に、良太は婚約者に幾通もの手紙を認める。その一部はこのような言葉になっている。
                                                   
〈・・・・・・・・これから先の国情がいかようになろうと、千鶴はしっかりと生きてゆけるに違いない。俺に関わるさまざまな記憶は、千鶴の中にいつまでも残るはずだが、そうであろうと、俺に拘ることなく人生を歩んでほしい。千鶴が俺とは関わのない人生を歩もうとしても、それは俺に対して不誠実なことでは決してない。このことを俺はここに明確に伝えておくし、千鶴にもそのように理解してほしい。かく言う俺自身は、千鶴との思い出を抱いてあの世で生きようと思っているが、だからと言って千鶴につきまとったりするつもりは全くない。とはいえ千鶴が助けを求めているとわかれば、どんな場合であろうと助けたいと思う。・・・・・・・・〉
                                                     
穴沢利夫と智恵子の悲恋に想を得たとはいえ、「造花の香り」は恋愛小説であるとともに、反戦平和を祈念する小説でもある。標題である「造花の香り」の下に、私はこのような言葉を書き加えることにした。「戦争の時代を生きた青年たちの声が聞こえる。幸せな人生を生きたければ政治を見張れ。我らが如き悲劇を繰り返すな」
                                              反戦平和を願って書かれた恋愛小説であり、序章と終章に小説のテーマが集約されている。小説投稿サイトの「カクヨム」や「小説家になろう」で読めるので、序章と終章だけでも眼を通してもらいたいと願っている。
   



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