父の歌集より 8 [父の歌集]
昭和8年後半の詠歌です。この歌集によれば、教師になって3年目の父は、夏休みに出雲南部から四国までの旅をしたようです。生前にその思い出話を聞いておかなかったことを残念に思います。
桑の葉ののびてひろがる畑中の朝の道行けば郭公の鳴く
青桑の畑になびかふ朝かすみ日矢の透りになく閑古鳥
日矢・・・・・・雲間から射す陽光
京太郎超え(京太郎は島根県邑智郡邑南町にある山)
去来する雲高うして峠路の桔梗かすかにゆれゐたりけり
篁(たけやぶ)に村雨すぐる音涼し山の湯の宿たそがれんとす
標柱に野萩こぼれてゐたりけり赤名峠をひた走る雨
赤名峠・・・・日本百名峠の一つで出雲と備後を結ぶ古代からの要路
鞆の海の潮干の潟にあさりする子等がそびらを夕日照らしつ
石搥の山のあたりに峯雲の漠々とわきて海涼しかも
四国路の雲光り見ゆ阿伏兎(あぶと)崎夕近まれば日ぐらしの鳴く
帝釈の岩の岨路を行きなづみいこひてあれば猿叫びけり
雲高う動かぬままに丘の畑は粟の穂ゆらに秋さりにけり
三瓶行 視草友と同行す(三瓶山・・・・・・島根県の火山)
夕山路あがたどりくれば向山のいただき白く月さしにけり
月はまだこの山かげをてらさざりほのぼのと白き峡の道ゆく
穂すすきのゆらぐか中にうちむれて牛はふしをり一つは鳴きぬ
色そみて未だも落ちぬポプラの葉光さむけく月のてらせり
久にして和める月のうすあかり夜浪白々と連りて見ゆ
さひめ山月の夜空に黒々とそしりたちたり穂すすきはえり
さひめ山・・・・・・三瓶山の別名
月にそむく山の夜空に黒々とそそりたちたり光るほすすき
2021-11-11 11:30
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