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若い世代に読んでもらいたい「きけわだつみのこえ」 [政治および社会]

「きけわだつみのこえ」が出版されたのは、今から75年前の昭和24年(1949年)10月である。戦後間もない頃であり、戦争を憎む感情が強かった時代である。
                                          
私が所持しているのは、昭和34年(1959年)発行のカッパブックス版だが、あとがきによれば、内容は初版とほぼ同等のものらしい。その書物の巻頭に記されているのは、「なげけるか いかれるか はたもだせるか きけ はてしなき わだつみのこえ」なる歌である。Wikipediaの「きけわだつみのこえ」には、この歌に関わる次のような文章がある。
                                                   
学徒兵の遺稿を出版する際に、全国から書名を公募し、応募のあった約2千通の中から京都府在住の藤谷多喜雄のものが採用された。藤谷のそもそもの応募作は「はてしなきわだつみ」であったが、それに添えて応募用紙に「なげけるか いかれるか はたもだせるか きけ はてしなきわだつみのこえ」という短歌が添付されていた。なお、この詩は同書の巻頭に記載されている。(Wikipediaより)
                                                   
昭和20年の4月から8月にかけて、多くの特攻隊が沖縄に向けて出撃しているが、その主力となったのは、学業半ばに徴兵された学徒兵だった。彼ら学徒兵が遺した書簡や日記が、戦後に遺稿集として出版されているが、「きけわだつみのこえ」は、数ある遺稿集の先駆けとして出版されたものである。
                                                   
「きけわだつみのこえ」を久しぶりに開いて、掲載されている遺稿の幾つかを読み返し、まえがきとあとがきに眼を通した。そのあとがきによれば、「きけわだつみのこえ」は戦後の若い世代の聖書となっただけでなく、国境を越えて、英・独・仏・エスペラント・朝鮮など、諸国語に翻訳出版されたという。
                                                   
あとがきにはこのような文章が記されている。
                                                   
<本年(昭和34年)はまさに本書初版以来十年目の秋である。その間の戦後十年の歳月は、日本の民主化と平和運動、学生青年運動、あるいは戦後思想史の光栄と苦渋とにみちた波乱激動きわまりない流れであるが、しかも今日、戦争の危機は依然としてなくなってはいない。そして、この危機のなくならぬかぎり、本書の生命は、いつかな消えることなく、「わだつみのこえ」は呼びかけをやめず、つねに不死鳥のごとく新たによみがえらずにはいない。>
                                                   
あの戦争から80年に近い歳月を経たいまでは、「きけわだつみのこえ」なる言葉を耳にしても、それが何を意味するのかわからない人が多いと思われる。そうであろうと、「きけわだつみのこえ」は版を重ねて、最新刊は1997年に岩波書店から出版されており、ほとんどの図書館で、「きけわだつみのこえ 第2集」とともに蔵書になっている。将来の日本が戦争を起こさず、戦争に巻き込まれず、平和国家であり続けるうえで、「きけわだつみのこえ」などの遺稿集は大きな力になり得るだろう。将来にわたって戦争を防ぐために、戦争を憎む感情が社会に(他国をも含めて)行き渡るよう願っている。
                                                   
付記(7月6日)
「きけわだつみのこえ」が出版される2年前(昭和22年・1947年)に、東京大学戦没学徒兵の手記集「はるかなる山河に」が出版されている。東京大学協同組合出版部により編集出版されたという。


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