日本の和歌には本歌取りなる作法あり [雑感]
朝ドラ「舞いあがれ!」の後半に、ヒロインの幼なじみである梅津貴司が詠んだ「君が行く新たな道を照らすよう千億の星に頼んでおいた」なる歌が出てくる。これが万葉集にある歌の本歌取りであることが、ドラマの中で明らかにされていた。
ドラマでは幾度も現れた万葉集の歌だが、正確には思い出せない。そこでネットで調べてみたら、ドラマの中で話題になった万葉集の歌は、狭野茅上娘子(さののちがみのおとめ)の短歌「君が行く道の長手を繰り畳ね焼き滅ぼさむ天の火もがも」だという。
平安時代以降には本歌取りがさかんに行われたらしい。古い著名な歌を利用するわけだが、著名なその歌に対する敬意に基づくゆえに、模倣とは異質なあり方である。最近はしばしばオマージュなる言葉が用いられるが、本歌取りにはそれに通じるところがありそうである。
本ブログの「吾が詠みし歌」に、「八十路にて詠む歌」として35回ほど投稿しているのだが、5月7日に投稿した「「八十路にて詠む歌 34」に載せた歌は、万葉集所収になる持統天皇の歌の本歌取りである。
「八十路にて詠む歌 34(2023.5.7)」再掲
春過ぎて夏来にけらし半袖の姿いつしか町に増えたり
4月20日は小林一茶の句を借り、4月25日は与謝蕪村の句を利用したのですが、今日は万葉集の持統天皇の歌「春すぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山」の本歌取りです。中学や高校時代の私は国語に興味を覚えなかったのですが、そして、さほどに記憶力に優れているわけでもないのですが、古い俳句や歌を利用した歌を詠むことになりました。特に意識はしなかったけれども、俳句や短歌に惹かれていたのでしょうか。
本ブログに「父の歌集より」なるカテゴリーを設け、父の歌を26回にわたって紹介したことを契機に、いまではカテゴリー「吾が詠みし歌」に、「八十路にて詠む歌」を載せております。とはいえ、去年の9月に開始してから8ヶ月の間に、わづか34回しか投稿していないのですが。
ここまで書いたら歌を追加したくなりました。というわけで、本歌取りにてもう一首詠みました。
春過ぎて夏来にけらし白シャツの姿増したり町なかの道
ドラマ「舞いあがれ!」の作者がどんな人か知らないのだが、梅津貴司が詠んだ歌として示される歌はいずれも、とても好ましい歌だった。歌を詠みはじめて一年に満たない私とちがい、歌人のレベルにありそうである。
2023-05-18 11:16
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