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戦地での体験を語った人と語らなかった人 [雑感]

私の父もそうであったが、復員兵の多くは戦地での体験を話さなかったようである。思い出したくもない軍隊での体験ゆえに、語りたくないのは当然だろう、という気がするのだが、積極的に語った人たちもいた。朝日新聞「声」に隔月ごとに連載される「語りつぐ戦争」には、戦争体験を聞かされた家族からの投稿が載ることがある。



2020年9月16日に投稿した「戦地での体験を語った物理学の先生」は、高校時代の物理を担当された先生に関わる記事である。戦後10年が経ったある日の授業で、その先生はいきなり戦争体験を語られた。ノモンハン事変でソ連の戦車に苦しめられたこと。太平洋の島で飢えに苦しんだこと。                                                                                                                                               

戦地での体験を語った物理学の先生」にはこのような文書がある。<ノモンハン戦争で生き残った横山先生は、太平洋戦争に際して南洋の島に送られ、再び苦しい体験を強いられた。自らの体験を語られるだけで、戦争に対する怒りは口にされなかったのだが、その胸の内には、無謀な戦争を引き起こしたあげくに、最も愚かな形で敗戦に導いた者たちに対して、強い憎しみの感情があったにちがいない。戦地で苦しんだ者にかぎらず、戦争による痛苦を体験した日本人の全てが、戦争を憎む気持ちを抱いていたはずである。>


戦争体験を語られた先生の表情と口調を、私は鮮明に記憶している。授業を中断しても語らずにはいられなかったその先生の気持ちが、充分に伝わってきたからであろう。無謀な戦争に導いた指導者たちへの怒り。飢えに苦しんで亡くなった戦友たちへの思い。反戦・平和の尊さを伝えたいとの願い。遠からず、あの戦争を記憶する人がいなくなり、映像や書物だけがあの戦争を語る日がくる。悲惨な戦争体験を経て生まれた日本国憲法は、反戦・平和を高く掲げている。憲法が改正されることになっても、9条の理想が受け継がれるよう願っている。




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