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北野武(ビートたけし)の「新しい道徳」はおもしろい [雑感]

  「新しい道徳」なる書名にひかれて手にしたら、著者名は北野武となっている。ビートたけしが映画監督北野武となり、いまでは著述家としても知られるようになったが、これまでに私が読んだのは、短編小説の「教祖誕生」だけである。
ページをめくって眼に飛び込んできたのは、「良心は道徳を造るかも知れぬ。しかし道徳は未だ嘗て、良心の良の字も造ったことはない」なる言葉。芥川龍之介が記した言葉とのこと。
   ますます興味をひかれ、面白そうなところを立ち読みしているうちに、著者の思うツボにはまって買うことになった。読み終えたいま言えるのは、「なかなか面白くて参考になるところも多く、読んで良かった」ということである。
本文は5章よりなっているが、ここでは第1章「道徳はツッコみ放題」の一部を紹介してみよう。

[小学校や中学校で使っている道徳の教材をパラパラとめくっただけで、あっちにもこっちにもツッコミを入れたくなる。……
たとえば、小学1・2年生の道徳の教材。最初の話題からして変だ。「自分を見つめて」なんて書いてある。小学1年生が自分を見つめるわけないだろう。他人だって見つめないのに]

[勤勉だの勤労だのが道徳なのは、ほんとうのところ、誰のためなんだろうか。……
勤労が道徳なのは、権力者が楽をするための決めごとなのだ。……いつの時代も、権力者は人を働かせたがる。今もそれは変わらない]

あとがきにも面白い文章がある。その一部を紹介してみよう。

[…………大昔から年寄りというものは、若者の行儀だの道徳観だのに難癖をつけ続けてきた。エジプトのピラミッドだか神殿だかに、象形文字で「今の若い者はなってない」という落書きがあるという話もあるくらいだ。もしそれがほんとうなら、今頃は若者の行儀も道徳観も、とんでもないことになっていなくちゃいけないはずだ。だけど、実際にはそうなっていない。…………
   道徳教育を徹底しないと、子どもがおかしくなってしまうなんていうのは、年寄りの錯覚でしかない。…………
   古くさい道徳を子どもに押しつけたって、世の中は良くなんかならない。そんなことより、自分の頭で考え、自分の心で判断できる子どもを育てる方が大切だろう。そのためには、まず大人が自分の頭で考えることだ。
   道徳を他人まかせにしちゃいけない。それがいいたくて、この本を書いた。あとは自分で考えてほしい。]

   面白い文章が多く、楽しく読むことができた。映画監督北野武は文章家でもあり、読む者をして考えさせ、うなづかせる力を備えている、と私は思う。


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