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散歩の途中で学童たちから挨拶されて [雑感]

故郷でしばらく過ごしている間に、私は幾度も田舎の道を歩いた。ひとと出会うことのまれな道だが、ときには学校帰りの学童とすれ違うことがある。そんなとき、学童の方からから声をかけられる、「こんにちは」と。

初めていきなり声をかけられたとき、清新な感覚と軽い驚きを覚えつつ、私はひとこと「こんにちは」と応えた。

子供たちが挨拶するのは、そのように教えられているからだろうか。それとも、人気のない田舎道を歩くときの心理が、子供にもそのような態度をとらせるのだろうか。登山道を歩くとき、ひとはすれ違う際には挨拶を交わすという。黙ったままにすれ違うことなどできない、という心境になるであろうことは想像に難くない。とはいえ、それはやはり大人の心理であって、小学校の低学年生にはあてはまらないという気がする。

幾日かが過ぎた頃の午後遅く、畑の中に人家が散らばる辺りを歩いていたら、いきなり畑の中から声が聞こえた、男の声で「こんにちわ」と。私はすぐに大きな声で応えるとともに、軽く頭をさげた。20mほどの距離はあったから、誰かと人違いされたのかも知れないのだが、そうであってもいっこうにかまわない、という気持ちであった。そのまま歩いてゆくと、犬を散歩させている若い女性が歩いて来た。すれ違うとき、今度は私の方から声をかけてみた。若い女性は小さな声で、同じように「こんにちわ」と応えた。見知らぬ老人に声をかけられて、その女性はどんな気持ちになったのだろうか。

ここまで書いて不意に思い出したことがある。10年以上も前のことだが、私の母が名古屋近郊の私の家を訪ねて来たことがある。母は付近の様子に興味を覚えたのか、幾度か散歩に出かけたのだが、ひととすれ違う際には声をかけたようである。田舎で生まれ育った母にとっては、それが当然のことであったろうが、声をかけられたそのひとは驚きながら、あわてて声を返したことだろう。あるいは、母からの挨拶を無視して通り過ぎた人もいたのかも知れない。10代で故郷を離れ、以降は都会で生活してきた私だが、私の中には今もなお、田舎で生まれ育った感覚の名残がある、という気がする。


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