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「コンコルドの誤り」を繰り返す日本 [政治および社会]

帰省中に読んだ地方紙「山陰中央新報」に、「コンコルドの誤り」なる記事が載っていた。筆者は日本銀行金融機構局審議役の木村 武氏である。いま書いているこの記事は、切り抜いたその記事を参考にしながら書いている。

その記事によれば、見通しが立たないにもかかわらず、見切りせずに事業を継続することを、経済学では「コンコルドの誤り」と呼ぶとのこと。その由来として、「英仏がかつて共同開発した超音速旅客機コンコルドは、製造しても事業が黒字になることは見通し難かったが、それまでにかけた膨大な投資コストが無駄になるという判断から事業を継続。案の定、赤字が累積し、最終的に、炎上墜落事故をきっかけに運航停止となった。」と記されている。

「投資コストが膨大であろうと、充分なリターンが見込めないなら即刻中止すべきとはいえ、人間の心理は経済学の処方箋通りに動かないことがよくある」として、幾つかの例があげられている。典型的な例として、かつての銀行の不良債権問題があげられている。国や地方自治体の事業において、事業見通しが途中で下方修正されても、これまで費やした工事費が無駄になるとしてプロジェクトが継続されるのも、「コンコルドの誤り」の事例だという。

ギャンブルにはまり込んだ者たちは、損失を取り戻そうとして、損失額をさらに増やしてゆくそうである。事業に関わる官僚たちにも、似た過ちを犯す傾向があるのだろうか。もしかすると、真の問題点は政官業癒着にあるのかも知れないのだが。

私の故郷である島根県には、途中で事業が中止された事例がある。

中海干拓事業は850億円もの費用を費やしたあげくに、事業そのものを中止せざるを得なくなった。途中で中止されたとはいえ、決断がもっと早ければ、無駄な出費を大きく減らせただけでなく、中海の貴重な環境を破壊せずにすんだはずである。さらに言えば、事業が計画された段階で、将来の社会情勢をも含めて深く検討されていたなら、あの事業が開始されなかった可能性すらある。

長良川河口堰に対しては、計画段階から強い疑問が投げかけられていたが、それを無視して着工された。1500億円を投じて完成した河口堰だが、利水を目的としていたにもかかわらず、運用されて20年を経たいま、利用されている水は20%に満たない状況にある。維持管理に要す膨大な費用と、鮎やシジミの激減をもたらしたことも、その存在価値に対する疑問を生じさせている。

現在進行中の八ッ場ダム建設は、8000億円を超える費用を要す可能性があるという。事業に関わる企業などには、多くの国土交通省OBがあまくだっており、政官業癒着による税金の無駄遣いが疑われている。目的とする利水と治水についても疑問が呈されておりながら、膨大なカネが費やされてゆく。

アベノミクスはどうであろうか。前例のないマイナス金利政策を実施しながら、さしたる効果は望めないようである。むしろその副作用に対する不安が云々される状況にある。安倍自民党が目指す真の目的がどこにあるのか、不安を覚える今日この頃である。

自民党政治がもたらしたバブル経済は、その崩壊から数十年を経た今もなお、その弊害の尾を遺している。アベノミクスの行き着く先に、後悔するような事態が起こらなければよいのだが。


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