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私が書いた小説について・・・・・・一人称の小説と三人称の小説 [小説]

初めて書いた小説「防風林の松」(本ブログの左側サイドバー参照)は、主人公の視点で書かれた一人称小説です。主人公の視点に縛られた書き方しかできないことに、ときおり不満を覚えることはありましたが、4月9日に投稿した「小説の神様に扶けられつつ書いた小説」に記したようにして、さほどに時間をかけることなく、長編の恋愛小説を書き上げました。 

そのようにして書いた「防風林の松」ですが、私には不安がありました。「この小説のほとんどは創作によるものだが、一人称の小説であるだけでなく、主人公は開発に関わる技術者だから、主人公を作者である私に重ねて読む人がいるかも知れない。」

というわけで、「防風林の松」のあとがきに、次のような文章を加えました。

「防風林の松」のあとがきより一部を引用

 ・・・・・・この小説は一人称で書かれているために、読んでいただいた知人の中には、主人公を私に重ねる人がいたようである。この小説には私自身の体験も入っているが、それはせいぜい1パーセントである。その1パーセントとは、中学1年生までの私が成績劣等生だったこと、ラジオに興味を抱いて独学したことが、成績向上に役立ったと思われること、電機会社に三鷹市から通勤していたこと、仕事に関わる資料や原書を持ち帰り、夜おそくまで読みふけったこと、会社にしばしば遅刻したことである。・・・・・・(引用おわり)

上記のようなあとがきを付してからも、原稿を読んでくださった知人や友人の中には、「この小説は君の体験に基づくものか」と聞く人が幾人もいました。私は一人称小説をたくさん読んでいますが、主人公を作者に重ねて読んだことはありません。「この小説は君の体験に基づくものか」と問いかけてきた知人たちも、名前を知られた作家による一人称小説を読んだときには、主人公と作者を重ねることはないと思われます。まったくの素人が一人称の小説を書いたなら、自伝小説として憶測される可能性があるということでしょう。

特攻隊に関わる小説「造花の香り」(本ブログの左側サイドバー参照)は、最初から三人称形式で書くことにしていました。「造花の香り」には、主人公なみの人物が複数人ありますので、三人称でしか書けそうになかったからです。とはいえ、結果的には一人称小説的な要素をもつ小説になりました。主人公である良太の視点で書かれたところは、良太を主人公とする一人称小説、そして、恋人である千鶴の視点で書かれたところは、千鶴をヒロインとする一人称小説、と見なされるかも知れません。そうであろうと、そのような形で書くことができたのは、三人称の形式を選んだからであり、書き方としては成功したと思っています。志賀直哉の代表作である「暗夜行路」は三人称で書かれていますが、実質的には一人称小説と見なされています。実質的には一人称小説であろうと、「暗夜行路」の主人公は「私」ではなく、「時任謙作」であるべきでしょう。「造花の香り」を書いた私にはそのように思えます。


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