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建国記念日に反対するオーストラリア人たち [政治および社会]

2月1日の朝日新聞朝刊に、「豪州の日 入植は侵略か」なる記事が掲載されている。それによると、オーストラリアでは、1月26日をオーストラリアデー(豪州の日)として休日になっているという。1788年1月26日に、流刑者たちを乗せた11隻の船団を率いた英海軍のフィリップ船長が、現在のシドニーに上陸し、英国旗を掲げた日を記念したものであり、1994年に国民の休日になったとのこと。


記事の前書きはこのような文章である。「英国の入植が始まった日を祝うべきか。オーストラリアでこんな論争が起きている。先住民にとっては、侵略が始まった日とも言えるためだ。その日から230年だった1月26日、恒例の記念行事を中止する自治体が出たほか、大規模な反対デモもあった。」


記事に付けられている写真は、1月26日にメルボルンで行われたデモの様子を伝えるものである。写真で見るかぎり、3万人とされる参加者のほとんどは白人であり、そのデモは「1月26日は侵略の日」と名付けられているという。参加者は「過去も未来もここは先住民の土地だ」などと称して行進したという。そのようなデモがメルボルンだけでなく、シドニーなど6つの州都すべてで行われたとのこと。デモには野党である緑の党も協力したという。


1月26日を豪州の日とすることに疑問を投げかける動きが、オーストラリアで広がりを見せているようである。その一方で、与党である保守連合には「1月26日に豪州に西洋文明がもたらされた。先住民を含む誰にとっても良いことだった」(アボット前首相)といった意見も根強いという。


イギリスによる入植が始まった頃の先住民の人口は 推定30万人から100万人だったものが、入植開始から130年たった1920年頃には推定6万人まで激減したという。イギリスによる入植が先住民にとって良いことだったとは言えそうにない。


その記事を読んで、このブログに投稿した記事「中国によるチベット侵略を正当と主張した中国人の言い分(2017.10.12投稿)」を思い出した。


中国はチベットを侵略し、属領として多くの中国人が入り込んでいる。「中国によるチベット侵略を正当と主張した中国人の言い分」に書いたように、私が知っている中国人は、「チベットは中国の一部であるからこそ、これから大いに発展できる可能性がある。チベット人にとっても、その方が好ましいことは明らかである」と主張した。中国によるチベット侵略を非難した私に対し、瞬時に返された言葉であった。それを聞いた私は、「おそらく、それが中国人の一般的な考え方なのだろう」と思った。独裁政治国家の中国では、思想と言論の自由がなかった戦前の日本同様に、国民の多くが政府の主張を受け入れているのであろう。


チベットを支配している中国が、チベット人にチベット語の使用を禁止しているとの情報がある。朝鮮を植民地にしていた戦前の日本は、朝鮮人に朝鮮語を禁じ、創氏改名政策によって名前まで日本風に変えさせたのだが、今の中国はそれと同じ過ちを犯しているのだろうか。


2017年11月1日に投稿した記事「『頼もしい若者たち』のオーストリア・・・・・・朝日新聞の記事に想う」に、若者たちが政治に高い関心を持つオーストリアをうらやましいと書いたが、自国の建国記念日に対する疑問を、多くの国民がデモで表明できるオーストラリアもまた、私にはうらやましく思える国になった。今の日本では言論の自由が保障されているとはいえ、日本でこのようなデモが行われたなら、一部の政治家を含む狭量な輩から激しい反発が予想され、安穏なデモにはなりそうにない。

卒業式での国歌斉唱に際して、それに同調しなかった教員が処罰されるこの国である。そのことに疑問を呈した新聞が、一部の政治家やその同調者から責められるこの国である。そのような狭量な政治家たちが、国民から指弾されることのない日本である。私はいま、オーストラリアを羨ましいと思う。

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