父の歌集より 12 [父の歌集]
昭和11年(1936年)に詠まれた歌です。教師になって7年目のこの年、2月からは婚約者に関わる歌が詠まれるようになります。その1年後に母と結婚したわけですが、晩年の母からしばしば、結婚に至るまでのことを聞かされたものです。
風むかふ鴎の一羽光り見ゆ岩まき砕く荒海の空に
寒あきて和む端山立上る煙おほらかに青みたりけり
夕づきて堤にさす日の寂けさやのびつらしたる土筆は光り
アカシアの芽ぶきそめつつ砂山に日かげあかるしてりわたりけり
花ぐもる海のしづかさや一隻の漁船は沖にこぎさかりけり
花曇り・・・・・・桜の花が咲く時期の曇った天気・春の季語
ぎぼうしゆの巻葉あかるく降りてゐる春雨は未だやまざりにけり
松の葉をもれすきて見ゆる春雨の空明くして芽木のさやけき
二月一日
汝が妻となりなむ人に出すべき餅なればよく焼きねといふも
寒あきのややに近づく夜の冷えを餅やきゐつつしづ心なけれ
飯もるとたゆなひながらさし出すその手にふれて心あやしも
此頃は歩む音さへ心つけてしづかになりぬ愛しき吾妹(わぎも)
酔ひて吐くわか背をなでつわぎも子は何かいひをり何かいひをり
短夜のあけの早さよわぎも子と語りてあれば外の面白みぬ
わぎも子に分れかへりゆく朝の道咲きさかりゐる月見草かも
2021-12-28 21:20
nice!(0)
コメント(0)
コメント 0