SSブログ

偶然の出会いに関するさらなる思い出 [人生]

今年になって幾度も投稿したことに、「思わぬ所で知人と遭遇する不思議さ」に関する記事がある。すでに4回も投稿しているのだが(付記参照)、私には思いがけない出会いの経験がまだあった。


20年あまり以前のことだが、愛知県芸術劇場で行われた演奏会に妻と一緒に出かけたことがある。楽団がアンサンブルオーケストラ金沢(今は「オーケストラ・アンサンブル金沢」になっているらしい)だったのか、名古屋フィルハーモニー交響楽団だったのか、今では記憶にない。演奏されたのはベートーベンのバイオリン協奏曲ロマンスで、ソリストは千住真理子だった。その前に別の曲目が演奏されていたのだが、曲名は思い出せない。


どうしたわけかその日の席は最前列で、私と妻は中央ブロックの右端だった。演奏する千住真理子は指揮者側に身体を少し廻しているので、その姿を真正面から見上げるようにして聴くことになった。演奏が始まる直前の、千住真理子の緊張した表情が印象に残っている。


最初の曲目の演奏が終わり、千住真理子の登場を待っていたときである、ふと隣席に眼をやると、座っていたのは同じ職場の仲間であった。その人も夫婦で聴きに来ていたのだが、かなりの時間が経過しておりながら、私たちは互いの存在に気づかなかった。気がつかなかったのは、先に座っていたそのひとの右側の座席に、その人に眼をやることなく座ったからである。私と妻が会話を交わしていたならば、その声で気づかれたと思われるのだが、座席についてから間もなく演奏が始まったからであろうか、私と妻は会話を交わさなかったようである。
                                                                        
その知人が音楽を好んで聴いていることは知っていたのだが、その日の演奏会に出かけることを、私たちは互いに知らなかった。私はと言えば、音楽は主にCDで聴いており、演奏会を聴きに出かけることはまれだった。そんな私たちが、偶然にも隣席同士で演奏を聴くことになった。私たちが共にその日の演奏会を聴くことになっていたなら、隣席同士になる確率を、聴衆の人数にもとづいて計算できるかも知れないのだが、その日のできごとは、ユング提唱になる共時性の一例としか考えようがない。名古屋でのクラシック演奏会は毎年数十回はあるはずだが、その頃の私は年に2回程度しか演奏会に出かけなかったのだから(それも多くの場合、名古屋音楽大学の知人からプレゼントされた招待券によるものだった)。


現役時代の後半を大学で過ごすことになった私は、ある年の空気清浄協会の会合に参加するため、八王子市と日野市の境界にある首都大学東京(東京都立大学に改称)に出かけたことがある。その場所にはかつて牧場があり、過去に勤務していた工場はその隣接地にあった。工場でストライキが行われた際には(付記2参照)、牧場脇の草の上で職場集会を行うことがしばしばだった。


久しぶりに訪れてみると、工場の跡地には団地のビルが建ち並び、牧場の跡地は大学のキャンパスになっていた。


空気清浄協会の会合が終わった後、サラリーマン時代に乗り降りしていたバス停でバスに乗り、名古屋に帰るために八王子駅に向かったのだが(横浜線で新横浜に向かうため)、バスの後方をふと見ると、昔の職場にいた女子社員の姿があった。十数年を経ても明らかにそれとわかったのだが、その固い表情を見たら声をかけることができなかった。その女性とはそれ以前にも、思わぬところで会ったことがある。電機会社の社員だった頃、休日に東京都内に出かけたある日、帰宅すべく電車に乗ったら(京王電鉄の新宿駅で)、同じ車両にそのひとの姿があった。偶然の邂逅を繰り返してきた私だが、同じ人と2度も出会ったのはその女性だけである。それもまた、「同時性」に関わる謎であろうか。


村上春樹の新作を読んで(7月20日)」なる記事を書いたことが、これまで思い出すことのなかった不思議な出会いを、次々に思い出させることになった。偶然の不思議な出会いを繰り返してきた私だが、もしかすると、このブログに書いた以外の体験もありそうな気がする。
                                                                             
ユングの提唱になる「共時性(同時性とも呼ばれる)」の考え方に信憑性があると考えるべきか、あるいは、人智を超えた理由によるものなのか、いずれにしても、私の場合にかぎらず、確率的には極めて起こりにくい偶然の出会いが、現実にはかなりの頻度で発生している。ネットに投稿しているひとの体験記すべてが、必ずしも事実とは限らないわけだが、偶然の出会いを繰り返し体験する人は、さほどに珍しくはなさそうである。


付記

これまでに投稿した偶然の出会いに関する記事


村上春樹の新作を読んで(7月20日)





付記2




nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。