SSブログ

81年前の修身教科書 [教育]

出雲の生家に滞在している間に、父が遺した書物を取りだしてみた。その中に、茶色に変色した古い教科書がある。表紙には「小学作法書」とあり、その脇には文部省調査と記されている。


巻末を見ると、昭和4年9月3日発行とあり、昭和11年3月5日129版改訂発行とある。父が遺したのは昭和11年版で、定価15銭(送料4銭)と表示されており、著作兼発行者は「帝国実行教育会」、発行所は「帝国教育学会」となっている。


見開きには文部省による「小学作法教授要項凡例」として、箇条書きで学童に教えるうえでの注意書きが記されている。


本文の最初に記されているのは、「国民精神作興に関する詔書」であり、「朕惟フニ国家興隆ノ本ハ国民精神ノ剛健ニ在リ之ヲ涵養シ之ヲ振作シテ以テ国本ヲ固クセサルヘカラス是ヲ以テ先帝意ヲ教育ニ留メサセラレ国體ニ基キ淵源ニ遡リ皇祖皇宗ノ遺訓ヲ掲ケテ其ノ大綱ヲ昭示シタマヒ後又臣民ニ詔シテ忠実勤倹ヲ勧メ信義ノ訓ヲ申ネテ荒怠ノ誠ヲ垂レタマヘリ・・・・・・」といった難解な文章である。かなり長い文章の最後は「・・・・・・力ヲ公益世務ニツクシ以テ国家ノ興隆ト民族ノ安栄社会ノ福祉トヲ図ルヘシ朕ハ臣民ノ協翼ニ頼リテ弥々国本ヲ固クシ以テ大業ヲ恢弘セムコトヲ翼フ爾臣民其レ之ヲ勉メヨ  御名御璽」となっている。


「申ネテ」は「かさねて」と、「誠」は「いましめ」と、「翼フ」は「こいねがう」と読むようふりがながつけられている。詔書の日付は大正12年11月10日である。


この書物の内容は、小学生に対して起居振る舞いなどを教えるものだが、歩き方や戸を開け閉めするやり方、食事に際しての口の動かし方、国旗の掲揚に関わる規則など、実にこまごまと指示している。人とのつきあい方や公衆道徳(公園のベンチの使い方や、落書きをしないことなど)についても、細部にわたって指示されている。


時に応じた振る舞い方を学んでおけば、後に役立つ場合も多いだろうが、その教科書の教え方は度が過ぎている、という気がする。起居振る舞いから歩き方など、個性に属すことにも規制が及ぶと、考え方まで型式にとらわれ、型にはまった思考や判断に陥りやすくなりそうに思える。


戦前から長らく教師を勤めていた父は、このような教科書を使って生徒を指導していたのだろうか。戦前の社会環境においては、政府の方針を無条件に受け入れるしかなかったわけだし、教師自身も、教科書の内容に疑問を抱かなかった可能性がある。


モリトモ・カケ問題で醜状を露わにした自民党だが、これからも道徳教育を復活すべく努めるだろう。公文書の改竄やイラク派兵に関する日報の隠蔽工作などを思えば、そして、特定秘密保護法と安全保障関連法に続いて、共謀罪法あるいはテロ等準備罪法とも呼ばれる改正組織犯罪処罰法、さらには集団的自衛権の行使容認を柱とした安全保障関連法を制定した安倍政権を思えば、国民がよほどしっかりと見張っていなければ、将来に悔いを残す法律が作られかねない。来年の参院選挙で自民党や公明党が惨敗すれば、その懼れが軽減されるのだが。せめて現有議席数を大きく減らすよう願っている。



nice!(0)  コメント(0)