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統計が国民を欺く道具に使われるとき [政治および社会]

3月12日の朝日新聞朝刊に、編集委員原真人氏による署名記事「統計不正 本来問われることは何か」が載っている。


記事の冒頭に、吉田茂元首相にまつわるエピソードが紹介されている。マッカーサー(日本が占領統治されていた当時の連合国軍最高司令官)から、「日本の統計はいいかげんだ」と責められた吉田は言ったという、「もし日本の統計が正確だったらむちゃな戦争などしなかった」と。吉田の孫である麻生太郎財務相が、自著の中に書いている話だという。


原真人氏による記事は、このような文章で締めくくられている。
《統計は事実や実態を知るための道具だ。ただし意図すれば事実をゆがめ、国民をあざむく道具にも早変わりする。
  冒頭の吉田茂のジョークには重大な事実誤認がある。日本軍は、日米の資源量や工業生産力に大きな開きがあるデータをかなり正確につかんでいた。対米戦争に勝てないことをわかっていたのだ。
  にもかかわらず開戦方針に都合のいいデータだけを取り出し、勝てるはずのない戦争に国民を引きずり込んだ。
  正確さだけが統計の価値を決めるわけではない。それを国民国家のために生かそうという使い手の誠実さがあって初めて、統計は生きる。》


原真人氏が言いたいことは、記事の中程に記されている次の文章にある。

  ・・・・・・・・、野党が(厚労省の統計不正問題の)事実確認に力を入れるあまり、本来問われるべき問題が陰に隠れてしまったのかもしれない。
  その問題とは、安倍晋三首相が統計のもつ危うさを無視し、国民受けのために都合よく利用してきたことである。・・・・・・
  ところが都合のいいデータだけを取り出し、並べ立て、「成果」や「果実」だと宣伝するのが首相の得意わざだ。
  
原真人氏はその例として、安倍首相がアベノミクスの成果としている有効求人倍率をあげ、それが欺瞞であることを指摘している。そして、安倍首相の自画自賛が繰り返されるうちに、国民の意識に「アベノミクスは成功」とすり込まれていく、と危惧している。


2月2日に投稿した本ブログの記事「安倍首相の年頭所感は嘘だらけ。人気ブロガー・きっこが一刀両断」は、人気ブロガーであるきっこさんによる、安倍首相糾弾記事を紹介したものである。朝日新聞の記事ときっこさんのブログの記事を、多くのひとに読んでもらあいたいと願っている。


原真人氏やきっこさんの指摘に対して、安倍首相はまともに反論できないだろう。そんな安倍政権に対する支持率は41%程度であり、意外な程に高い。この国には、愛国心のない国民が多いと言うことであろうか。

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