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テレビ技術の巨人Albert Rose 博士の講演を聴いた日 [雑感]

テレビやカメラの撮像素子に関わる人であっても、Albert Rose という名前を知る人は、いまでは極めて少ないと思われる。アメリカRCA社 (付記1 参照)の物理学者・技術者であり、撮像管や光導電現象に関する大家であった。撮像管に関わっていた私は(付記2 参照)、 その論文や著書を読んでいたので、Albert Roseは尊敬の念を抱いている技術者のひとりであった。英語を苦手とする私だったが、Albert Rose の論文や著書などを読んだことで、英文の読解力が向上したように思う。

                                                   


昭和40年代のある日、Rose 博士の講演会があった。それを知るに至った経緯に記憶はないが、私はその講演を聞くことにして、会場である電気通信大学(東京都調布市)を訪ねた。

                                                   


講演会の会場は数十人しか入れない講義室だった。聴講者は座席数の半分程度だったと記憶している。企業からの参加者はわずかで、多くは学生だったのではなかろうか。

                                                   

   

Albert Rose は夫人同伴で講義室に入り、主催者による紹介が終わるとすぐに話し始めた。電気通信大学の教授による通訳つきの講演だった。

                                                   


撮像システムに関わる内容だったが、RCA社で関わった撮像管のことではなく、「撮像システムの理論的な感度の限界は何によって決まるのか」という内容だった。黒板を使いながら、「究極の感度はフォトン(光子)1個に対応する信号とノイズによって決まる」と話されたように記憶しているが、50年も昔のことだから、記憶はかなりぼやけている。とはいえ、今でも印象に残っていることがある。Albert Rose とRose夫人の笑顔である。Rose夫人は講演が終わるまで、話している夫に笑顔を向け続けていた。さほどに高齢ではなかったはずだが、夫人の笑顔にはシワが多かった。そのシワが、むしろ笑顔を魅力的にしている、と私には思われた。

                                                   


出張扱いで参加した講演会であったが、私の仕事に寄与するところはなかった。とはいえ、もっとも敬意を抱いていた技術者の話を聞くことができたので、私には十分に満足すべき講演だった。仕事に情熱を傾けていた、若い日の思い出である。

                                                   


Albert Rose がRCAを退職したのは1975年(昭和50年)だという。その講演を聴いたのは昭和40年代だったと記憶しているので、日本を訪れたのは仕事のためだったのかもしれない。もしかすると、その業績に敬意を抱いている企業か大学が招いたのかもしれないのだが。

                                                   


光導電技術と撮像管に関わる大家の講演でありながら、電気通信大学の教室で、わずかな聴講者を相手にささやかに行われた。まだ生きておいでだろうか、そこに至る経緯を知る人は。



付記1 RCA(Radio Corporation of America)について

                                                   


RCA社はテレビジョンに関わる技術の多くを開発し、その発展に寄与したのだが、1986年に消える結果になった。本ブログで幾度かRCAに触れたことがあり、そのひとつが、2021年2月25日に投稿した「巨大な名門企業(RCA社)であってもつぶれることがある」である。

                                          

付記2 撮像管や私が関わった仕事に関する投稿記事

                                         ・技術開発をチームで推進する場合の問題点・・・・・・私の経験より(2015.8.27)






(2019.10.3)






                                          





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